【産業医が教える】夏のアウトドア 最強の熱中症対策! “アイススラリー”

知識・体験

はじめに

夏といえば、青空の下で楽しむアウトドア。
川遊びや海水浴、釣りといった水辺のアクティビティに加え、山でのBBQやハイキングなど、自然の中で過ごす機会がぐっと増える季節です。

しかし、最近の日本の夏は異常ともいえる猛暑が続いています。外でじっとしているだけで汗が止まらない日が珍しくありません。
気づかないうちに「なんだか頭が痛い」「体がだるい」「集中できない」といった熱中症の初期症状を感じた経験がある方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、大手企業で専属産業医として勤務している私が、企業での熱中症対策をもとに、アウトドアでも実践できる効果的な熱中症対策「アイススラリー」をご紹介します。

アウトドアを安全に楽しむために、ぜひこの夏休みの熱中症予防にお役立てください。

最強の熱中症対策 “アイススラリー”

熱中症対策といえば、こまめな水分補給、塩分の摂取、そして日陰での休憩 ― そんな定番の方法を思い浮かべる方が多いでしょう。

確かに、それらは有効な対策ですが、実はもっと効果的な方法が存在します。
それが「アイススラリー」です。

ポカリスエット アイススラリー

アイススラリーとは?

ポカリスエット公式HPより

アイススラリーとは、一言でいえば「飲める氷」のようなもの。
氷の微細な粒子が均一に含まれた半液体状の飲料で、通常の冷たい水やスポーツドリンクよりも体内を効率的に冷却することができます。

実際に、スポーツの世界では広く使用されており、プロアスリートたちがパフォーマンス維持や熱中症予防のために導入しています。
また近年では、産業医の立場からもその有用性が注目され、企業における熱中症対策としても活用が進んでいます。

アイススラリーには、以下のような商品があります。
コンビニ・ドラッグストアで販売されている場合もあります。

熱中症の病態

熱中症とは、「高温環境に長時間さらされることで体温の調節がうまくいかなくなり、全身に生理的な異常を引き起こす疾患」です。

具体的には、体温上昇に伴って、以下の生理的反応が起こります。

  1. 発汗による水分・ミネラルの喪失
  2. 末梢血管の拡張による循環障害
  3. 高体温による臓器障害

注目すべき点は、熱中症の本質は「体温の上昇」にあるということです。

水分や塩分の補給は、脱水やミネラル喪失への対処にすぎず、根本的な予防にはなりません

そのため、熱中症を防ぐためには、体温を上げない、あるいは効率よく下げることが何より重要になります。

救急における熱中症

私はこれまで、熱中症で救急搬送された患者さんの対応に関わってきました。

救急での熱中症への対応として、まずは「全身の迅速な冷却」「冷たい点滴の投与」が行われます。

氷水で濡らしたタオルや氷嚢を使って体を冷やし、同時に冷たい点滴を投与して体温を下げます。
このように内側・外側の両方から全身を冷却します。

そして、この考え方は軽度の熱中症や予防段階でも応用できます。

アウトドアでは、直射日光が当たる場所や、冷房設備がない状況など、周囲の環境によっては体の外側から冷やすことが難しい場面もあります。
そんなときに、体の内側から効率よく冷却できる方法として「アイススラリー」が注目されているのです。

アイススラリーは他の食品で代用できる?

アイススラリーは、効率的に体温を下げられるという点で熱中症対策に有効です。
とはいえ、近くにアイススラリーが売っていない場合も考えられます

そんなときは、チューペットやアイス、氷などでも代用は可能です。

これらも体温を下げるという点で一定の効果が期待できます。
大切なのは「体の内側から冷やす」ことです。
アイススラリーが最も効果的ではありますが、手に入らない場合はこれらも活用してみてください。

屋外でどうやって保冷すればよいの?

保冷剤とクーラーボックスだと冷却効果が低い…

炎天下のアウトドアでは、アイススラリーを保冷剤と一緒にクーラーボックスに入れても、すぐに溶けてしまいます。

そこで、簡単だけど効果的な「アウトドアでの保冷テクニック」をご紹介します!
高性能なクーラーボックスは必要なく、自宅にあるもので簡単に実践できます。

アウトドアでの保冷テクニック

【必要なもの】

  • クーラーボックス
  • アルミシート or 梱包材(プチプチ) or 新聞紙
  • ジプロック
  • 保冷剤

ポイントは「塩+氷水+空気」の組み合わせで、冷却力を最大限に引き出すことです。
手順は以下の通りです。

①ジップロックなどの密閉袋に氷水を入れて塩を加える

塩を加えることで氷の融点が下がり、0℃よりも低い温度での冷却が可能になります。

②アイススラリーをジプロックに入れて、それをアルミシートや緩衝材(プチプチ)や新聞紙で包む。

これによって、ジプロックとアルミシートの間に空気の層ができ断熱材として働くため、長時間冷たい状態を保つことができます。

③それを保冷剤と一緒にクーラーボックスに入れれば完成

アウトドアでもアイススラリーを最大限活用するために、ぜひこの方法を試してみてください。

まとめ

アウトドアを思いきり楽しむためには、熱中症の正しい理解と対策が欠かせません。

今回ご紹介した「アイススラリー」は、体の内側から効率的に冷却できる実用的な熱中症対策です。

さらに、屋外で活用できる保冷テクニックを取り入れれば、アウトドアでも安心してその効果を引き出すことができます。

熱中症は決して他人事ではなく、誰にでも起こりうるものです。
「体温を下げる」というシンプルな視点を持ち、アイススラリーを上手に活用して、この夏を健康に乗り切りましょう!

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