はじめに
都会での仕事や日常の忙しさに追われる日々。
そんなとき、焚き火の炎をぼんやり眺める時間は、疲れた心を癒してくれる特別なひとときです。
でも、この焚き火の癒し効果には、本当に科学的根拠があるのでしょうか?
今回は、焚き火の健康効果についてエビデンスをもとに医師が解説していきます。
良い効果①:焚き火のリラックス効果を示す研究
焚き火を見つめたり、木がぱちぱち燃える音を聞いたりすると、自然と心が落ち着く感覚を覚える方も多いでしょう。この焚き火のリラックス効果に関する研究を紹介します。
アラバマ大学のChristopher Dana Lynn氏らの研究によると、焚き火の映像とその音を同時に体験した場合、多くの参加者の血圧が下がったという結果が報告されています。
この研究は226人の成人を対象に行われ、「①焚き火の映像のみ(無音)」「②焚き火の映像+音」「③コントロール群(何もしない)」の条件で比較されました。
その結果、「②焚き火の映像と音」が組み合わさった条件で、特にリラックス効果が高まる傾向が見られました。さらに、焚き火を体験する時間が長いほど、リラックス効果がより強く現れたとのことです。
研究チームは、この効果が焚き火の炎のゆらめきや木が燃える音が、脳の副交感神経を刺激し、リラックス状態を促している可能性があると考えています。
引用元:Christopher Dana Lynn. “Hearth and Campfire Influences on Arterial Blood Pressure: Defraying the Costs of the Social Brain through Fireside Relaxation.” Evolutionary Psychology, 2014.
良い効果②:α波(アルファ波)と1/f ゆらぎがもたらすリラックス作用
α波(アルファ波)によるリラックス作用
焚き火の炎をゆったりと見つめているとき、脳内には「α波(アルファ波)」と呼ばれる脳波が増加することが知られています。
4種類の脳波
脳波の種類 | 周波数(Hz) | 波形の特徴 | 精神状態 |
---|---|---|---|
δ波(デルタ波) | 1~3Hz | ![]() | 熟睡、ノンレム睡眠 |
θ波(シータ波) | 4~7Hz | ![]() | 浅い睡眠、レム睡眠 |
α波(アルファ波) | 8~13Hz | ![]() | リラックス、瞑想状態 |
β波(ベータ波) | 14~30Hz | ![]() | 活動的、集中状態 |
脳波には上記の4種類があります。
α波はリラックスしているときや瞑想中など、心が落ち着いている状態で多く観察される脳波です。
α波は精神的な安定感やストレス軽減をもたらすと言われています。
1/f ゆらぎによるリラックス作用
焚き火の炎の揺らぎには「1/f ゆらぎ」と呼ばれる自然界特有のリズムが存在します。この1/f ゆらぎは規則的すぎず、無秩序すぎない「心地よいリズム」とされており、自然環境の音や光にも共通して見られます。
メカニズムについてまだ完全に解明されていない部分もありますが、1/f ゆらぎがリラックス効果や集中力の向上に寄与することが報告されています。
注意点:焚き火の煙による健康リスク
焚き火には癒し効果がありますが、発生する煙には注意が必要です。
薪や炭を燃やした煙には一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、PM2.5などの有害物質が含まれています。これらの物質は呼吸器に悪影響を及ぼし、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)の悪化、アレルギー症状の誘発を引き起こす可能性があります。
焚き火を行う際には健康リスクを理解し、注意深く行動することが重要です。
健康的な焚き火の楽しみ方
焚き火のリラックス効果を楽しみつつ、煙による健康リスクを避けるために以下のポイントを守りましょう。
- 風向きに注意し、煙を直接吸い込まない。
- 長時間煙にさらされないようにし、喘息やアレルギー体質の人は煙から十分な距離を取る。
- 静かな環境で焚き火の炎をゆったりと見つめ、副交感神経を刺激してリラックス効果を高める。
これらを意識することで、焚き火を安全かつ健康的に楽しむことができます。
日々の疲れを癒すために、ぜひ取り入れてみてくださいね。
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